アニメ業界はつらいよ>『アニメ新大陸』



これまでの研究成果をお伝えするページです。
更新日:1999/10/18
更新内容:新規



 ●アニメ界のぴあ

 「アニメ新大陸」とは、1997年7月1999年5月まで間、ビデオソフト 売場に置かれていたチラシで、体裁はB4を4つ折りにしたもの。
 B4全面に1色刷りで、「新譜る・ピックアップ」というメディア別( DVD, LD, VHS, CD)の新譜リストがあり、裏はアニメ関係の独自記事で 構成されている。アニメの新譜リストということで、アニメメディア界 の「ぴあ」を目指したものと思われる。

       (1997年7月号 創刊号)









 ●大アンケート

 私は新宿ヨドバシカメラでこの1998年6月号を発見してから、出かけ るたびに収集していった。というのも、その号の発刊1周年大アンケー トがとても面白かったのだ。


 当時、私は少年マガジンのアンケートに注目し、と学会誌6にも記事 を書いた。それにもまさる面白さ。
 A〜Eの5ブロックにわたり、54問にわたり、対象はアニメファンに 限らず、ショップ店員、制作スタッフ、販売会社宣伝担当まで、業界の 方の意見を求めるという大胆なもの。以下により抜きで紹介します。



 Aブロック アニメ新大陸
  には次のような「設問」と「回答例」があった。
  2】記事内容についての感想は?
   a)視点が変わっていて面白い b)業界のウンチクが役に立つ
   c)ありきたり d)よくわからない e)その他
  3】アニメ評は的確でしたか?
   a)視点が変わっていて面白い b)けっこう辛口
   c 22】再リリースものについてご意見を。
   例えば・・・BOXをバラ売りし直すのはズルい!とか。
  23】廃盤についてご意見を。
   例えば・・・限定生産と限定販売の違いがわからない・・・とか。
 商品販売に関する不安、不満を増長させるような誘導尋問であ「いわゆるアニメ誌とは
一線を画したものを目指している、ということを主張したいのだと思い
ます。
 そして、あわよくば有料情報/批評誌になろう、という意図が感じら
れる。
 Bブロック アニメソフト(商品)
  には次のような「設問」と「回答例」があった。
  20】あなたが商品担当だったらどんな特典を企画しますか?
   例えば・・・ボイス目覚まし付等身大フィギアとか。
  21】最近のビデオ発売ペースをどう思いますか?
   例えば・・・OVAはデキを優先して出してくれないと、恐くて手が
         出せないとか。
  22】再リリースものについてご意見を。
   例えば・・・BOXをバラ売りし直すのはズルい!とか。
  23】廃盤についてご意見を。
   例えば・・・限定生産と限定販売の違いがわからない・・・とか。
 商品販売に関する不安、不満を増長させるような誘導尋問である。
 
 Cブロック TVアニメ
  には次のような「設問」と「回答例」があった。
  28】ポケモン騒動の報道をどう思いますか?
   例えば・・・『人気を妬んだ他局の大袈裟な報道とテレ東の必要以
          上の低姿勢にうんざり』とか。
 ポケモン騒動以来、爆発シーンが減りましたね。でも、ポケモン自体の
パワーは凄い。偽物商品は多数出回るし、アメリカでも大ヒット。韓国に
も紹介されるとか。
 Dブロック アニメ業界
  には次のような「設問」と「回答例」があった。
  33】アニメ制作上の不満を挙げてください。
   例えば・・・おれに乳を揺らさせろ!とか。
  36】声優のアイドル化をどう思いますか?
   例えば・・・「声優」と呼ぶなと言われても困るとか。
  39】声優ラジオはおもしろいですか?
   例えば・・・ハガキに対するリアクションが甘いとか。
 業界情報もしっかり集めようとしている。乳揺れは奪い合いになるの
ですね、やっぱり。最近のヒロインのはよく揺れる。声優ブームにもチ
ェックを入れている。
 こんな設問をするということは、アニメ業界者もアニメビデオを買い
にビデオソフト売場に来るということか?
 Eブロック アニメ周辺
 には次のような「設問」と「回答例」があった。
  44】アニメにしてほしくない作品とその理由を挙げて下さい。
   例えば・・・『浦沢直樹:HAPPY!/スポーツの描けるアニメーター
          がいないから』とか。
  47】あなたが行ってみたいのはどんなことをするイベントですか?
   例えば・・・『美人プロデューサーがセクシーなコスプレで司会
          する、全員プレゼント付き先行上映会』とか。
  51】コスプレについてご意見を。
   例えば・・・『ウチのクラスにはキューティーハニーがいる』
          とか。
  53】カラオケのアニソンにリクエストをどうぞ。
   例えば・・・ちゃんと本物の映像を入れてくれ!とか。
 ここまでくると、アンケートというよりは、編集者の趣味を押しつけ
ているだけ、とい「、誘導尋問的で自由記述の多いアンケート設計にしたの
はあなたでしょう。
 引き続き、ねばり強く交渉してみます。


 ●特集ページ
 親切にも、『アニメ新大陸編集部』は未入手だったバックナンバーを
送ってくれたので、全23号のコンプリートセットになったのは喜ばしい。
 1997年9月号の特集は「特典攻略法」と題して、メディア新発売につ
きものの特典に、どんなものがあるのか、そして、なぜ特典をつけなけ
ればならないのかという業界の事情が明かされている。
 1998年1月号のアンケート結果も教えてくれとお願いしたのだが、返事は
「大アンケートの結果はかなり複雑なもので、ここでのお答え
はご容赦下さい」
というものだった。
 残念。しかし、「かなり複雑」とは、いったいなんだろう?
 統計しにくい、誘導尋問的で自由記述の多いアンケート設計にしたの
はあなたでしょう。
 引き続き、ねばり強く交渉してみます。
 1998年1月号には、「新大陸企画」起動ということで、新作紹介、ま
た、Webページとのタイアップ企画が発表されている。
 1998年2月号には、「アニメ業界就職ガイド」ということで、平成不
況下での就職方法を整理してあり、最下段にはガイナックスやスタジオ
ライブ、スタジオDEENの募集がある。親切な特集だが、ほんと、給与は
安い。吉野屋の深夜番よりはるかに安い。ガイナックスは、1ヶ月の研
修期間はさらに安くコキつかわれるようだ。
 1998年3月号はDVDのハード、ソフトの特集。
 1998年5月号はOAVの定義を検証。OAV=Orignal Video Animationのは
ずだったが、"O"=がひっかかっているよう。今現在、Oは"お金"か、"お
ねーちゃん"という意味か?
 1998年7月号は2年目突入記念で、ここ1年のビデオリリースチェッ
クを増ページで。
 1998年8月号は、「'98春の新番組ってどうだったの?」ということ
で新番組チェック特集。
 その年の4月は、アニメの新番組が30余り、とても一人でチェックで
きるような状況ではなくなった。遅れてきたアニメバブル経済に、有り
難い特集である。
 編集部は、オープニングだけのダメアニメ、スポーツが描けない非動
画アニメの新番組に怒りを放っている。オープニングのスタッフを別に
クレジットするようになったのは、いつごろからなんでしょ?
 1999年1月号は再びDVDのハード、ソフトの特集。
 1999年3〜5月号は、海外ジャパニメ事情の特集。香港、アメリカ、
ヨーロッパ、と来たところで終刊。なかなか力の入った特集なのに、本
当に残念です。
 ●廃刊理由を探る



             (1999年5月号 終刊号)

 1999年5月号でいきなりの最終刊。23号、2年にとどかなかった。
 1999年5月号にストレートに『休刊』の理由が記述されているわけで はないのだが、ヒントはお手紙コーナーにあった。
 「あ、メーカーの圧力じゃないからね」
という前振りがあり、
 「アニメ業界は今回の不況の影響はどの位あるんですか?」
といヤラセくさい質問に
 「たぶんアニメ新大陸が休刊するくらいだと思います、ハイ。」
と答えている。
 ズバリ、広告出稿が減ったため、編集・配布の費用がまかなえなくな ったのであろう。
 この仮説を立証する方法はないかと紙面をさがした。
 「新譜る・ピックアップ」を見比べると、毎月100タイトル以上、 様々なメディアでアニメが発売されている。これだ、と思った。
 グラフを見ていただきたい。
 終刊までの一年の、タイトルをメディアの種類別に私がカウントして 、積み上げグラフにしたものです。
 アダルトのタイトルは入ってないので、日本ではアニメタイトルは毎 月何百となるのだろう。









 グラフを見ると、DVDが圧倒的に増加し、毎月30タイトルになってい
る。
 LD BOXは、1998年末に出し切ってしまったようだ。これからは、DVD BOX
の時代になるのだろう。
 VHS ONLYという分野も減っているとはいえ、なくなってはいない。こ
れには、LD BOXで出したものの出し直しや、旧製品の低価格化再リリー
スが含まれている。プレゼント用やレンタル用の需要もVHSにはあるため
、今後もしばらくはなくならないであろう。
 映像メディアの交代が進んでいることは見て取れる。
 DVDはハード、ソフトともにまだこれからの商品で、中古市場も未発達
なので、メーカー、ソフト屋さんも力がはいるのだろう。
 それに伴い、宣伝メディアも変化したものと察せられる。
 DVDソフト専門の宣伝誌がすでにあり、お店に置かれている。
 大手ソフトメーカーの東映、バンダイ、パイオニア、ビクターはそれ
ぞれソフト宣伝チラシを持っている。
 それら宣伝誌は、ヨドバシカメラに行くとすべて揃います。
 さらに、インターネットのWebページ。コンテンツ制作には、紙媒体と
同様の労力はかかりますが、配布の費用はタダみたいなもので、最新情
報を載せやすい。
 また、CS放送、ケーブルテレビの普及が本格的になり、それらの売り
はアニメ専門チャンネルの数だったりする。家で、子守がわりにアニメ
を見せるには、セルビデオやレンタルビデオよりもアニメ専門チャンネ
ルの方が手間がかからないのだ。
 今はまだ実験段階だが、アニメのインターネット有料配信も始まるで
あろう。
 こうした変化のなかで、宣伝費を効率的に使うには、「アニメ新大陸
」は不向きだったのでしょう。
 そして、アニメビデオの世界にも不況は押し寄せているということな
のでしょう。宣伝費は限られ、メディアの数は増える一方。
 「フォトマーケット」誌の、ビデオレンタルの統計をみると、レンタ
ルビデオ市場は特に減っているわけではなく、順調に推移している。し
かしそれも、今まで野外のレジャーや、セルビデオ、LDにお金を使って
いた人が、不況でビデオをレンタルしているだけなのかもしれない。
 数字に出ない、大きな変化が起きているのかもしれない。
 ソフトメーカーの売り上げ推移も調べたかったが、良い統計を見つけ
られなかった。良い情報源を知っていたら教えてほしい。


 ●アニメの未来

 アニメ業界に新大陸発見!と参入するも、お宝発見できず。
 甘くなかったわけだ。
 小渕政権下(アナウンサーは汚物と発音しているように聞こえる)の
この不況では、アニメ界の広告費に関しても厳しい選択の時代になった
のであろう。もはや、「好景気」が伝説になりつつある現在、広告メデ
ィアにも興亡が激しくなるのはしかたないことなのだろう。
 「アニメ新大陸」は「ぴあ」にはなれず、「シティロード」路線のま
ま、「シティロード」同様に終刊となった。
 「シティロード」とは?今現在、「ぴあ」は「××ウォーカー」など
と戦っているが、昔は批評誌色の強かった月刊情報誌「シティロード」
と競合していたのだ。映画紹介欄にも内容批評をのせたりする、独特の
癖のある雑誌であった。
 「ぴあ」が隔週刊、週刊と発刊サイクルを短くする中でも、一時隔週
刊になったものの、月刊誌に戻って志を貫いた。その雑誌を覚えている
ひとももう 少ないだろう。
 私は、この記事を書くことで、「アニメ新大陸」を忘れないでおくこ
とにします。

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